梅津:本日は相模原市農業協同組合の小泉幸隆代表理事組合長に、相模原市農業協同組合のSDGsの取り組みをはじめとする地域貢献活動や農業の未来についてお伺いしたいと思います。小泉様、本日はよろしくお願いいたします。
農協の協同活動は
すべてSDGsにつながっている
梅津:まず、SDGsの取り組みを始めとした地域貢献についてお伺いできればと思います。
小泉:農協でやっている協同活動はすべてSDGsにつながってきていると思っています。現在はフードドライブ活動をメインに行っております。活動も広まっていて、かなりの利用者、品物が集まってきておりまして、十分な効果が出てきています。
その他にも、昔ながらの循環型の農業による環境問題解決、災害時の避難所の確保、食料の確保といったことも人助けにつながっています。また、子どもたちへの農業の理解度を上げる食農教育も、重要な立場として以前から取り組んでいます。
この様なことを皆さんに知っていただきたいと思っています。
梅津:SDGsは後からできた言葉ですので、農協さんが日頃活動していることがSDGsに当てはまっていたということですね。
これらの活動をどうやって広めるか、どうSDGsを意識してもらうかということを私たちがやっていかないといけないことだと感じています。
小泉:SDGsをきっかけとして協同組合の原点「助け合い」ということを理解して農協を利用していただけているので、組合員の皆さんの理解は早かったです。こちらからお願いをしなくても自ら率先して活動してもらえて、盛り上がっているところです。
梅津:農協さんは「さがみはらSDGsパートナー(※)」に登録されていますので、相模原市内にSDGsを広めていくという目標があると思います。この点で農協さんの強みはどのように生かされますか。
(※ SDGsの達成に向けた取組や地域課題の解決、SDGsの普及啓発に取り組んでいる企業・団体等が相模原市へ登録することで認証される制度です。)
小泉:今はコロナ禍ということでなかなか難しいですが、本来であれば市で行っている「相模原市農業まつり」などの場を借りてSDGsをPRしていきたいと思っています。
梅津:農協さんのネットワークは強みですね。
相模原青年会議所では2019年から相模原市と「SDGs協働推進宣言」をしていまして、市内によりSDGsを広めようという事業を行っています。
例えば、去年は子どもたちにSDGsの仕組みを教えるために、中学校で着なくなった服を集めて糸に分解してエコバッグにするような事業を行いました。
今年は、SDGsのモデルケースを創ることを意識し、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の観点から相模原市内の資源を最大限活用して堆肥を作る取り組みをとおして、地域課題を経営戦略に取り入れる企業を増やす運動を行っております。また、小学校給食に地産地消やSDGsの要素を取り入れることで、食を通したSDGs普及を図り、より多くの人に根付かせる事を考えております。
人こそ資源
年功序列の人事から実力主義に変えて行きたい
梅津:さて今年度、相模原青年会議所では「Wish ~人をつくる、未来を変える~」というスローガンを掲げています。人は幸せを願うからこそ未来のために行動できると考えています。
そのためには人をつくっていくのが大切なことになるのですが、人をつくるという点で農協さんが大切にしていることはありますか。
小泉:私は人こそ資源と理解しています。どんなにお金があっても優秀な人材がなければ組織は伸びません。やはり人づくりは重要です。
農協は協同活動を主として行っている組織で、一般の組織と少し違う点もありますが、一般の組織と同じように考えていかなければ成長できない部分もあります。年功序列の人事から実力主義に変えて行きたいと考えています。
農協は特定の仕事ではなく、金融、共済、経済(直売所)といったように総合事業を展開しているため、職員のやるべきことが多くあります。
そのため、資格を取るための研修会などを開いて、積極的に参加してもらって、個人のスキルアップにつなげています。
また、農協の仕事はモノを作る、売るという仕事ではなくて地域の共同活動、組合員さんとの会話、ふれあいがいちばん大事なので、人間として温かみのある教育ができればと模索しているところです。
そして、JCさんのように若い力が大いに必要だと思っています。
今、若い人の自由な発想を抽出するために、様々なプロジェクトを発足させています。
職場の改善、協同活動の研究会、中長期の計画を立てるといったプロジェクトを通して、仕事に対するモチベーションが上がってきたように感じています。
梅津:やはり、人を育てる上で、幸せを願うからこそ優しくできる、成長を願っているからこそ厳しくもできると思います。
その優しさと厳しさが伝わるから温かみが生まれて、それによって人間関係が良くなると感じています。
私も地域に育ててもらって近所の方の温かさを感じたからこそ、今この様な活動をしているということもあります。
先程、プロジェクトのお話をいただきましたが、何かを変えるために、考えてもらったり経験をしてもらったりするなかで成長してもらうことが狙いにありますでしょうか。
小泉:疑問に感じていること、こうしたほうが良いと思っていても今まで言えなかったこと、といった意見の抽出ができる場を設けたので、そういったことができてきたと思います。これは今後に大きなプラスになると感じています。
梅津:私たち相模原青年会議所としても、メンバーにどうやって経験してもらうかが重要と考えていまして、行動することでポジティブチェンジできると日頃からメンバーに伝えています。
今、教育の現場でも子どもたちの教育の仕方も変わってきています。
日頃の勉強にどうやって命を吹き込むかというところが課題と言われていますが、
これは私たち大人も考えないといけない点で、企業としても多く経験をしてもらって、日頃の業務に意味をどうやってもたせるかという意識が経営者に大事と感じています。
また、経営者としても、従業員に多く経験をしてもらって、日頃の業務に意味をどうやってもたせるかという意識が大事と感じています。
若い方への認知度向上は
農家の高齢化、後継者不足を打開するチャンス
梅津:相模原青年会議所ではサーキュラーエコノミー(循環型経済)の観点から堆肥作り運動を行っています。堆肥作り、と一見経済や社会にあまり影響のない取り組みに聞こえますが、この運動は、既存のビジネスモデルの前提や常識を改めて考え直す機会を提供し、異分野での連携を生み出します。また、地域にとっても、堆肥作りをとおしての新しいコミュニケーションの促進、学生の教育の機会、新規就農者・地域農家さんの支援、耕作放棄地の解消、可燃ごみ削減への足掛かり等の大いなる可能性を持っています。
これについて農協さんにもご協力のお願いをしているところですが、私たちに限らず他団体との連携に関してはどのように考えていらっしゃいますか。
小泉:いまのところ企業との連携はありませんが、学校との連携が多いです。
感染症の拡大防止の観点もありますので、企業との連携が難しい状況という面あります。
もともと農業と福祉をつなげていく取り組みが全国的にあるが、生産者の農家と結びつけるのが難しく、実現できていない。
組合員を守るというのが最優先になっているので、その他の取り組みについての連携はあまりありません。
その中でも相模原市と連携し農業研修講座を開催し、修了生を「NPO援農さがみはら」を通じて、生産者をサポートする取組を1995年より行っています。
梅津:どちらかというと連携のハブとなるようなイメージでしょうか
小泉:農業をお手伝いできるような技量を得てもらっています。
梅津:私たち青年会議所でもハブとしての機能を持っていまして、賛助会員同士や我々交流会等を企画することで、パートナーシップを共創していきたいと考えています。
今回のような対談を行うことで、私たちを介したさらなる連携が生まれると嬉しいですし、興味のある若い方が農業に触れる機会になれば良いと思っています。
私たちの強みをお互い生かしていければいいですね。
小泉:この連携は、我々としてはこの上ないチャンスだと考えています。
農業は高齢化、後継者不足があり、若い方への認知度が低いのではと考えておりまして、広報をするにしても、我々が発信するより、若い方々の言葉で発信してくれれば魅力が伝わりやすいと考えています。
JCさんが取り組んでいる地域・社会貢献の姿勢は農協と共通していますので、より一層連携できればと思います。
梅津:私たち150名のメンバーは、各々本業を抱える中、地域貢献の活動をしています。
家族のためには会社、地域も大事にしないといけない。
家族、会社、地域はつながっているので、すべてが良くならないと、良くなったと言えないと考えています。
ですので、地域のことを考えるのは特別なことではなくて、当たり前のことだという世の中にしたいと思っています。
小泉:我々としても、色々な人達が協同するのが大切と考えております。
梅津:循環経済で協働のお話をさせていただきましたが、この取り組みや既存のモノ同士を組み合わせて新たな価値が生まれると考えています。
農協さんとしては新たに取り入れるべきものや価値についてどう考えていますか。
小泉:農業が大事と思ってくれていても、実際に農業をしてくれる人は多くはありませんので、どうやってこの点を打開していくかということは重要と考えています。
我々の地域は都市型の農業で、消費者はたくさんいますが生産量に限りがあるという特徴があります。
ビジネスとしてやるからには儲かる農業になるべきです。
どうやって農業を守っていくのか、攻めていくかという両面が必要なので、若い人の考え方を取り入れていくことが大事と考えています。
梅津:私たちのような農業の素人だからこそ出る発想もあるかもしれませんね。
的はずれなこともあるかと思いますが、利用できることがあれば取り入れて良くするきっかけにしていただければ嬉しいです。
小泉:日頃農家でない若い人の話を聞くことが少ないので、そういった人たちが農業についてどう考えているのか探ってみたいという気持ちがあります。
ですので、聞けるだけで価値があると思っています。どんな言葉があるのかなと。
梅津:私たち相模原青年会議所でも150名メンバーがいますので、それぞれお互いの仕事に関しては素人ですが意見交換を行っています。
業界での常識も違うので、そんな考え方したことなかったなと、思ってもいないことに気づけるので、その様なことを取り入れています。
今回の連携も、そのきっかけになればと思っています。
最後に、その他私たちに期待することはあればお聞かせいただけますでしょうか。
小泉:これからの世の中を担っていく若い方々ですので力を大いに発揮していただきたいと思っています。
また、この連携によって若い後継者にも期待をさせてあげたいなと思っています。
若い人が農業を始めるきっかけになったり、農業をやっている人が青年会議所の運動に参加したり、そういった流れになれば嬉しいですね。
梅津:小泉様、本日はどうもありがとうございました。
相模原市農業協同組合ホームページ
https://www.ja-sagamiharashi.or.jp